先頭に立って競馬する逃げ馬は、レースを引っ張る存在として欠かせません。
スタートからゴールまで、迫ってくる後続馬に負けない精神と粘り強さで勝利をつかむ逃げ馬は競走馬の中でも目立ちます。
ここでは、逃げ馬がどのような競馬を行うの紹介した上で、逃げ馬の得意とする舞台、また、苦手とする条件を解説します。
《この記事で分かること》
- 逃げ馬がどのような競馬をするか分かります。
- 有名な逃げ馬が分かります。
- どうして逃げ馬は好走率が高いのか分かります。
- 逃げ馬が苦手とする条件が分かります。
- 逃げ馬にまつわる格言を紹介しています。
1:逃げ馬の競馬スタイル
逃げ馬はどんな競馬を行うのでしょうか。
最初に、逃げ馬がレースにおいてどのようなかたちで競馬するのか、紹介します。
1-1:スタート直後に先頭を目指す
先頭に立って自分のペースで競馬することこそが逃げ馬がもっとも得意とする競馬スタイルです。
そのため、ゲートが開いたらほかの馬を差し置いて、なにがなんでもハナ(先頭)を狙っていくのが逃げ馬のスタート直後の競馬となります。
1-2:自分のペースで競馬を行う
先頭に立ったらとにかく自分のペースで競馬を行おうとします。
ゆったりとした流れで競馬を行うのが得意な逃げ馬であれば、スローペースでレースを引っ張ることが多いです。
逆に、激流のような速い流れを好む逃げ馬が先頭に立った場合はハイペースで競馬が進行します。
また、序盤から後続を突き放してリードを開こうとする馬は序盤から後続との差を開こうとします。
1-3:ラストスパートでも先頭をキープして勝利を目指す
逃げ馬の終盤の仕事は、後続の追撃を振り切って勝利を目指すことです。
逃げ馬は自分のペースで競馬できるので、よほど適正距離がかみ合わない限りは直線でも余力を残しています。
最後の最後、後続を振り切って勝利を目指す姿こそ、逃げ馬の競馬スタイルです。
2:有名な逃げ馬
実際に活躍した逃げ馬にはどのような馬がいるのでしょうか。
歴代の逃げ馬の中でも知名度の高い馬を紹介します。
2-1:サイレンススズカ
サイレンススズカは90年代、それどころか競馬史のなかでも特に知名度の高い逃げ馬です。
4歳時(現在の3歳)は意外と安定しない走りでクラシックタイトルに手が届きませんでしたが、武豊騎手とコンビを組んでからは一変。
ハイペースの大逃げでゴールまで飛ばすという、ある意味競馬の原点のような競馬を身に付けたサイレンススズカは古馬になってから6連勝を飾ります。
ミッドナイトベット、マチカネフクキタル、ステイゴールド、エルコンドルパサー、グラスワンダーといった面子を6連勝のあいだに打ち砕いたサイレンススズカは断然一番人気の支持を受け、天皇賞(秋)に挑みました。
ここでも1000mの通過タイム57秒4の超ハイペースで大逃げを打ちますが、3コーナー、ちょうど大ケヤキを過ぎたあたりで失速。
道中で骨折してしまい、競走中止、その日に予後不良となりました。
もしも、天皇賞(秋)で故障しなければ、とんでもない記録を打ち立てていたかもしれません。
また、武豊騎手にとっても非常に思い入れのある馬で、のちに騎乗したディープインパクトと比較しても、サイレンススズカならディープインパクトに勝てるといわせるほどの馬でした。
2-2:キタサンブラック
クラシック路線でも結果を残したキタサンブラックは古馬になってから本格的に逃げ馬として才能を開かせた馬です。
最終的に手にしたG1タイトルは7つで、同期のドゥラメンテが怪我のために引退したあと、世代の頂点に立ちました。
丈夫な馬で、どんなローテーションでも結果を残し、中距離から長距離で抜群の安定感を誇るキタサンブラックが得意とする競馬は、スタミナをフルに活かした逃げです。
2017年の天皇賞(春)では、先頭でハイペースで逃げるヤマカツライデンには目もくれず、自分の競馬に徹底し、3分12秒5のレコードタイムでゴールします。
ディープインパクトのタイムを0.9秒更新したのです。
逃げ馬としてのイメージが強いですが、この年の天皇賞(秋)は水田のような不良馬場で出遅れからの差し切りで勝っています。
また、初G1タイトルとなった菊花賞でも最後の3~4コーナーでほかの馬がスパートをかける中、一頭だけ中団馬群内ラチから末脚を伸ばしてリアルスティールに先着しました。
このことから、本質は差しでも通用する馬で、どのような展開でもポテンシャルを発揮することができたのです。
2-3:エイシンヒカリ
デビューから5連勝でオープン入りを果たしたエイシンヒカリも典型的な逃げ馬です。
エイシンヒカリの知名度が一気に上がったのはデビューから5戦目に挑んだアイルランドトロフィーです。
スタートからハイペースで後続を突き放すエイシンヒカリは1000mを58秒4のハイペースで飛ばします。
直線でも手ごたえよく逃げていましたが、すこしずつ外によれ、そのうち後続が殺到します。
外に斜行しながら競馬をするエイシンヒカリは一時後続に捕らえられたようにも見えましたが、最後の最後、まさかの差し切る形で5連勝を飾りました。
ハイペースの大逃げでサイレンススズカを彷彿させるような競馬を行ったエイシンヒカリ。
その後、勝ち負けを重ねながらも、最終的には海外のG1タイトルを2つ手にし、種牡馬入りを果たしたのです。
3:逃げ馬は好走率が高い理由
実は、逃げ馬はほかの脚質の馬と比較すると先行馬とならんで好走率は高いです。
どうして逃げ馬はほかの脚質の馬よりも好走率が高いのでしょうか。
3-1:自分のペースで競馬できる
逃げ馬はハナに立って競馬をするので、自分のペースで競馬することができます。
ペース配分を自分で行うことができるので、ベストを尽くしやすいんですね。
対して、後ろから競馬を行う差し馬や追い込み馬はレース展開を作ることができません。
逃げ馬は後ろから競馬を行う馬よりも出し切りやすいので好走率が高いです。
3-2:つつまれる心配が少ない
つつまれるとは、馬群に囲まれることです。
先行馬より後ろの馬にいえることですが、すぐ近くに馬が多数いると、いざスパートをかけようにも接触する恐れがあるので、抜け出せずに凡走することはよくあります。
しかし、逃げ馬は先頭に立って競馬をする性質上、つつまれる可能性はほとんどありません。
逃げ馬のポジションは、全力を発揮しやすいのです。
3-3:短い距離ほど好走率が高い
短距離になればなるほど、逃げ馬の好走率が高くなります。
短距離は距離が短いので、例えペースが速くてもそのまま押し切ることができるからです。
また、差し馬や追い込み馬がスパートを仕掛けても、前を走る馬が余力を残しやすく、前残り有利になります。
ただし、短距離レースはスタート直後から全力で走りやすい環境なので、必然的にペースは速くなります。
もし、道中でバテてしまったら途端に後方有利の舞台に様変わりします。
4:逃げ馬が崩れやすい条件
すべての脚質の中でも好走率の高い逃げ馬ですが、どんな条件下でも真価を発揮するというわけではなく、苦手とする条件もあります。
どのような展開が逃げ馬にとって苦しいのか、解説しましょう。
4-1:逃げ馬が多数揃ったレース
逃げ馬が多数揃うと、逃げ馬にとって苦しくなります。
逃げ馬はどうしてもハナに立って競馬しないと、自分の力を発揮できない馬が多いです。
そのため、スタート直後からハナを狙いますが、それはほかの逃げ馬も同じです。
先頭の奪い合いが激化することで、前半のペースが速くなります。
また、最初のポジション争いが長く続くと、その分体力を使うのでペース配分が狂いやすく、最後まで走るだけのスタミナが削がれてしまいます。
逃げ馬多数の舞台は逃げ馬にとって最良の条件ではないのです。
4-2:流れる競馬
ハイペースの競馬のことです。
先ほどの逃げ馬多数の舞台でも少し触れましたが、ハイペースの競馬になると、前の馬は一杯になりやすいです。
逃げ馬は自分でレースメイクを作れるので、当然ゴールまでの余力を保ちながら競馬を行いますが、騎手との折り合いを欠いて暴走することもたまにあります。
それだけではなく、競馬場によってはハイペースになりやすい舞台もあります。
例えば最初のコーナーが短いコースでは、ハナ争いが激しくなりやすいのでペースは速くなりがちです。
ローカル競馬場のダート1700mによく見られますね。
距離で見ると、距離の短いコースほどペースは速くなり、長くなればなるほどスロー競馬になりやすいです。
5:逃げ馬にまつわる格言
競馬には馬券を当てるための格言があります。
逃げ馬に関する格言もいくつか存在しますよ。
参考にしてみてください。
5-1:逃げ馬は人気薄を狙え
人気馬と比較すると、人気薄の馬はノーマーク扱いされることが多いです。
人気薄の逃げ馬は無警戒なので、自分の競馬がしやすい環境下といえるでしょう。
パフォーマンスをフルに発揮しやすいので、馬券に絡むこともしばしば起こります。
2015年のヴィクトリアマイルにおけるミナレットがまさにそうでしょう。
5-2:単騎の逃げ馬
出走馬の中で逃げ馬が一頭しかいなければ注目したいです。
逃げ馬が一頭ということは、よほどのことがない限りその馬が先陣を切る可能性が高いです。
その馬がペースを引っ張るのはほぼ確定しているので、自分のペースを貫いて全力を出すことができます。
まとめ
過去のデータを参照したところ、逃げ馬はほかの脚質の馬よりも好走率が高く、ほとんどのコースで差しや追い込み馬よりも好走しています。
当記事では、どうして逃げ馬は好走率が高いのか、紹介させていただきました。
また、逃げ馬の競馬スタイルや、逃げ馬が苦とする条件も解説しています。
逃げ馬がどのような馬なのか、さっぱり分からない人に、少しでも理解いただけたら幸いです。